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髪のトラブルとアーユルヴェーダ

アーユルヴェーダでは髪の健康を守るために、頭部へのオイルマッサージを習慣化することを勧めます。
なぜオイルマッサージによって髪が健康になるのか。また、髪に起きる様々なトラブルの原因と基本的な対処法についてどのような見解を示しているのかまとめました。

健康な髪ができるまで

髪の毛は、ダートゥ(身体組織)形成の過程で発生すると考えます。
(参考記事:アーユルヴェーダ基礎[ダートゥについて]
食べものの栄養成分によって滋養された組織が代謝作用により副組織(ウパダートゥ)や老廃物(マラ)を生みますが、髪の毛は骨組織(アスティダートゥ)の副産物として現れ、栄養成分を受け取りながら成長を続けます。
これは、

①食べものの栄養成分が充分であること
②消化代謝(アグニ)の力が適切に働いていること
③血液循環が適切であること

が髪の健康にとって重要だということを示します。

髪のトラブルの原因

髪のトラブルの原因は大きく4つに分けられます。

(1)適切な食習慣や生活習慣の欠如
(2)汚染環境
(3)精神的ストレス
(4)それ以外の不明なものも含む

これらによってドーシャやアグニに障害が起こることで髪の毛の健康に影響を与えると考えます。

具体的には、ヴァータと絡んだピッタ(熱)が毛根に影響し、抜け毛や白髪の原因を引き起こし、ラクタ(血液)やカパの悪化により毛穴が閉塞し新しい健康な毛髪が成長できないのです。

髪の毛におこる不調は、マイナートラブル(大したことがない)として片付けられがちですが、個人の自意識にも影響を与えるため適切な対処や予防が必要です。
アーユルヴェーダ文献の中にもマイナートラブルとして髪の毛の不調がいくつか取り上げられています。
以下はその代表的なものになります。

髪のトラブル①抜け毛(カリッティヤ)

”髪がない”という意味のカリッティヤについて、チャラカはヴァータの力をかりたテージャス(熱)が毛穴を焦がしてしまう、と説明しています。
頭皮と毛穴部分のブラージャカピッタ(皮膚の光沢を支えている)の汚染がラクタとカパドーシャを悪化させ、これにより毛穴部分に閉塞を起こし新しい毛髪の成長を止めてしまいます。
ヴァータとピッタの結合した作用により毛髪が抜け落ちた後、ラクタとカパによる閉塞で新しい毛髪が成長してこないため、薄毛や禿げが起こるという考え方になります。

カリッティヤの予防には日々頭皮にオイルを塗り込むことでヴァータを鎮静し、他のドーシャもバランスさせていきます。またアシュターンガフリダヤの作者ヴァーグバタはナスヤ(点鼻)で頭部への管を手入れすることで頭部のドーシャを整え髪の健康をかなえると、しています。

髪のトラブル②白髪(パリッティヤ)

パリッティアも、前述のカリッティヤ同様、ピッタの悪化が直接的な原因とされています。
ピッタの持つ熱により毛穴の中の髪の色をつける毛母細胞の活動が充分にできないと髪色が薄くなったり白髪になります。
パリッティヤを引き起こすピッタの悪化は、頭皮上のブラジャカピッタだけではなく、疲労やストレスなどによりバランスの崩れた体内のピッタやアグニ(毛髪のメラニン生成に関連)が頭部へ移動する、という考え方もあります。
これは、ヴァータドーシャの働きに関係があります。

tejo’nilādyaiḥsahakeśabhūmiṃdagdhvā śukuryātkhalatiṃnarasya|  kiñcittudagdhvāpalitānikuryāddhariprabhatvaṃcaśiroruhāṇām||132||   

ヴァータとともにある体熱が毛根(頭皮)を瞬間的に焼くため、男性脱毛が引き起こされる。毛根が少し焼けただけで、頭髪は色が薄く、白くなる。

チャラカサンヒター トリマルミヤ チキッサ 26/132


アーユルヴェーダ文献では、パリッティヤの分類をドーシャ別にしています。

ヴァータ由来:枝毛があり色が薄く(グレイ)乾燥している毛髪
ピッタ由来:頭皮が赤味を帯び黄色っぽい毛髪
カパ由来:頭皮は滑らかで、白く太い毛髪


パリッティヤの予防法はカリッティヤ同様に日々頭皮にオイルを塗ることとアヌタイラによるナスヤ、そして食生活や生活習慣の見直しと、感覚器官を整え滋養し、精神的ストレスから解放されることだとしています。

髪のトラブル③ふけ(ダルナカ)

文献には、カパ、ピッタの悪化により頭皮が硬くなり痒み、ざらつき、鱗状のフケが発生するという症状が記されています。この不調も引き金を引くのはヴァータドーシャだとされています。
ダルナカに対しては、頭皮へのオイル塗布やレーパ(ハーブ湿布)が最良のケアだとしています。
また、シローヴァスティ(頭部オイル浸透法)や浄化のナスヤも有効だとされています。
ブリンガラージやグンジャなどのヴァータ、カパ鎮静オイルでのシローアビヤンガが推奨されています。

髪のトラブルに関するアーユルヴェーダ論文

髪に関する主な問題(若白髪を含む)について、アーユルヴェーダの古典解釈と見解、および予防とケアについて解説した論文   
「アーユルヴェーダから見た髪に関する問題とそのケア」 

 

髪が健康でないということはどういうことか、についてアーユルヴェーダの古典解釈と合わせて治療法及び予防法について解説した論文 
「アーユルヴェーダのケアケア −治療と予防の観点から–」 

 

アーユルヴェーダの観点から白髪の原因、病因及び治療法を古典の解釈から解説し、白髪のケアに使われるアーユルヴェーダハーブの成分と効果をを科学的に検証した論文 
「若白髪のケアに使われるアーユルヴェーダハーブの検証」 

 

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まとめ

以上のことから、健康な髪を維持するために必要なのは、ディナチャリヤの実践やバランスの良い食事、アグニを整え、ドーシャバランスを図ること、といった毎日の積み重ねで叶うものだとわかります。

☑︎スパイスなどの辛味
☑︎酢やヨーグルトなどの酸味
☑︎塩味
☑︎食べると胃のなかが熱くなるようなもの
☑︎アルコール
☑︎喫煙
☑︎直射日光にあたる
☑︎過度な運動や活動
☑︎夜更かし

などはピッタを悪化させるため直接的な髪のトラブルの原因になります。

また、怒り、悲しみ、不安、といった精神的な要因も侮れません。
これらの揺らぐ感情によってもピッタは悪化します。


シローアビヤンガやシローダーラといった頭部への施術を提供する際に、お客様のドーシャバランスや体調に合わせた髪の健康を守る日々の生活法なども共有し、お悩み解決の糸口を増やしていきましょう。

 


 

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