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真髄を探し求めて PNNM Ayurveda Medical College 視察記 ①2022年3月

とある本の出会い

確かあれは2014年のこと。

あの頃の私はアーユルヴェーダの伝承や伝統を知りたくて、理解を深めたくて、必死にあれも知りたい。これも学びたい。と当時仲良くしていたドクターに言っていました。
そして、私が知りたいことは、きっと日本でアーユルヴェーダを学び深めたい人たちも知りたいことだろう、と信じて疑わず、南インドアーユルヴェーダ施設Vaidyaratnamに直談判し、2013年〜2016年まで日本人向けの研修コースを開催してもらっていました。

毎回素晴らしい内容の研修をしていただき理解が深まっていくのですが、同時にそれまでになかった新しい疑問が生まれるのです。その度に先生たちに質問をするのですが、その様子を見たコースディレクターであるドクターが私にある本を手渡してくれました。

「あなたの質問に対する答えはほとんどこの本に書いてあります。」

それが、Harisree ayurveda hospitalの T.シュリークマール師の解説したアシュターンガフリダヤでした。

私の語学力やアーユルヴェーダの知識で理解できるのか、かなり不安でしたが実際に読み始めると驚きました。
シュローカと言われる詩のような原文の意味を丁寧にわかりやすい英語で解説されているだけでなく、関連する他文献の引用や、サンスクリット文法や作者の思想や時代背景にまで踏み込んで説明がされているではありませんか。

解説を読んでいくうちに、厳格な医学書というよりむしろ、人間のありのままの姿の美しさと生きる喜びを喚起する文学書のように感じられるほど。

この本との出会いが、それまでの私の「医学」としてのアーユルヴェーダ観を変えるものになってしまいました。
そして、止めどなく溢れていた疑問質問の回答をほとんど全ていただくことができました。

本を手渡してくれたドクターに感謝を伝えるとこう返事がきました。

これは僕たちのような教える立場にある医師にとって重要なガイドなんだ。これを読めばかつてケーララのアシュタヴァイディヤ達がどんな想いでアーユルヴェーダを実践し伝えていたかわかるから。」

続けて

「本当はあなたもこのT シュリークマール師から直接学べたらいいと思うよ。ただ正直難しい。彼は大学の中でも特別な位置の先生で、特別なクラスを担当してもらっているから… ごめんね。外国人向けのクラスのオファーは出せないんだよ。」

と申し訳なさそうに言ってくれました。

その時がっかりした、というより正直なところホッとした記憶があります。医師でない私がT シュリークマール師から直接学ぼうなんておこがましすぎると思ってしまったからです。

突如湧き上がった想い

時は流れ、2018年。
このままでいいのだろうか?と不安な気持ちがどんどん大きくなっていました。
今まで長い時間をかけて、南インドの偉大な先生方が惜しみなく教えてくれたアーユルヴェーダを、私はちゃんと誰かの、何かの役に立てられるのだろうか?と。
私は本当の自分のお役目(ダルマ)を果たせているのだろうか?と。

その時に「T シュリークマール師に直接お会いしたい。先生のお言葉を直接聞きたい。」という想いがムクムクと湧き上がってきました。

南インドアーユルヴェーダの真髄を現代に伝えるテキストを著された師にお会いすれば、きっと学べることがあるはず。
この不安な気持ちを払拭できる何かがおきる気がしたのです。

「師は特別だから外国人向けのクラスはオファーできないんだ」
とかつて言われた事がチラチラと頭に浮かびますが、それよりも「お会いしたい」気持ちが勝っていました。

思い立ったら即行動。

ネットで検索を重ね、以前お世話になっていたVaidyaratnamだけではなく、別の大学でも教えていらっしゃることがわかりました。
2019年に入ってすぐ早速その大学に連絡をしたところ大歓迎とのお返事をいただき翌年2020年3月に訪問させてもらう約束をしたのです。

PNNM Ayurveda Medical College の特殊性

大学のホームページを見てまず驚いたのは、アーユルヴェーダ大学のページのはずなのにTOPページにヴェーダーンタの総本山シュリンゲーリのジャガッドグルのお写真があること。

PNNM=Poomulli Neelakandan Namboodirippad Memorial 
大学の名前にケーララの高名なアーユルヴェーダ医師の名がついていること。

また動画で学生がアシュターンガフリダヤのパーラーヤナ(伝統的な学習の様子)を見て、確実に現代的アーユルヴェーダ大学とは違うことがわかります。

Tシュリークマール先生だけでなく、PNNM Ayurveda Medical College のことをもっと知りたくなりました。

実際に訪問できる日を、そしてTシュリークマール師にもお会いできる日を心から楽しみにしていたのですが、残念ながら新型コロナウィルスの影響で2020年3月に約束していた訪問は叶わなくなってしまったのです。

2022年3月遂に大学訪問そして… 

2021年11月インドへの入国ができるようになり、ようやく叶った2022年3月の渡印。

本との出会いから約8年。
最初に大学へコンタクトしてから約3年。

遂にPNNM Ayurveda Medical Collegeに訪問させてもらうことができました。

そして、想いが実りTシュリークマール師に直接お礼(師の本でアーユルヴェーダ観が変わったこと)を伝えることができたのです。

(大学に到着しそのまま壇上でスピーチしている時の様子がTシュリークマール師とともに映っている記念すべき写真と共に地元紙に掲載されました)


インドを訪れるたびに、この国には想いと願いを思わぬ形で叶えてくれる神様がやっぱりいるのかな、と思うのでした。


PNNM Ayurveda Medical Collegeに滞在した2泊3日間の様子はPNNM Ayurveda Medical College 視察記 ②に続きます。

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